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俺の居場所
「朝ですよ、アリア様」
その声と同時にカーテンが開かれ、部屋に光が降り注ぐ。
「……もう少し寝かせて」
「もう、仕方ないですね」
その声と同時にカーテンは再び閉じられた。
「では、私は失礼しますわ。ノワール。アリア様が起きたら呼んでくださいね」
「はい」
俺はベッドの横で頭を下げた。
(相変わらず、アリアに甘いな。)
彼女の名はスティラ。白と黒のメイドに身を包んだ、この館の使用人だ。いつもにこにこしていて、背景に花がちらついている。美人で、金色の髪が綺麗な女性だ。ただ、少し何を考えているかわからない時がある。
そして、彼女が仕えている主人というのが、俺の横のベッドで気持ちよさそうに寝ている少女、アリアである。
アリアは普通の人間ではない。魔女だ。それも、かなり特殊な事情を抱えたそれである。
「ノワール」
眠たそうな顔でこちらを見下ろし、俺の名を呼ぶ。
「なんだ?」
「隣来て」
嫌な夢でも見たのだろうか。たまに、俺をぎゅっとしたい時があるようだ。
俺は彼女のベッドへゆっくりあがってい―。
「アリアさまー!青いお花が咲きました!!」
嬉しそうな声を上げ、部屋の扉を開けた彼と目が合った。合ってしまったというべきか。
「……ノワール?そこで何してるの?」
「別に、何も。ただ、アリア…さまに呼ばれたので」
「何もしてなくはないよね?獣の分際でアリアさまのベッドに上がろうとしてるんだから」
(勘弁してくれ)
俺を睨みつけ怒っているこの人は、執事服に身を包んだ、アリアに仕えるもう一人の使用人、ルゥナ。わかる通り、アリアのことが大好き。感情豊かで自由人。背が高く美しい銀髪を持った男性である。スティラと双子なのだそうだが、似ているところと言えば、緩くウェーブのかかった髪質とアリアに対する忠誠心ぐらいだろうか。
今日はまだ静かだったから油断してた。この場面見られると面倒なんだよな。
「ルゥナ、うるさい」
アリアが目をこすりながら体を起こした。
良かった。起きてくれて。
「だってアリアさま、そいつが……」
「ノワールがどうした?」
「そいつはもともと人間ですよ!」
「だから?」
「嫉妬します!!」
はっきり言ったな。
「元人間現オオカミに嫉妬してどうする。まったく。ルゥナの所為で目が覚めた。着替えるからスティラを呼んできて」
「は~い……」
彼はあからさまに肩を落とし、命令に従うのだった。
(あ、スティラを呼ぶの俺が頼まれてたんだった。まぁ、流れだよな)
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