人生の転機

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人生の転機

 俺の家は貴族だ。貴族といっても下級。都会暮らしではなく、どちらかというと田舎。大きな館とそこそこの土地、複数の使用人を雇っているくらいで、大貴族ではない。  そして、俺は次男。この家を継ぐのは兄さんだから、父も兄さんのことばかり見ている。母は昔から病気がちで、少し前に亡くなってしまった。母は優しかったから、俺はとても悲しかった。父もあまり笑わなくなって、母がいなくなった家は空気が重く感じられた。  別にいじめられていたわけでも、厳しくされていたわけでもない。兄さんの方が父のプレッシャーで大変だったと思う。まぁ、兄さんは楽観的で割と何でもできるタイプだったからうまくやっているように見えたが。  兄さんと仲が悪かったわけでもない。特段良くもなかったが、とにかく、なんとなく、居づらかった。俺は兄さんと違って秀でているところが何もない、普通の人間だったから。  俺は何をしているのだろうと、考える日々が増えた。外に出たい。もっと広い世界を見て、自分の存在意義を見つけたい。  そんな漠然とした俺の願いを叶えてくれたのが、使用人のブランだった。  18歳の時、知見を広げるために少しの旅に出ることになった。もっと多くのものを見た方が、俺の学びにつながると、ブランが提案してくれたのだ。実際、大人に近づいた子供をよくできた使用人と学びの旅に出す家は少なくない。父も了承してくれた。  こうして俺は、それなりの、普通の家から、しばらく離れることとなった。  ここから俺たちの、まさに人生が変わったあの場所との出会いの話を始めよう。
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