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15歳の美少年家庭教師
「15歳の家庭教師?」
「ええ、あなたにつけたわよ。そうでもしないとあなた勉強しないでしょ?」
「何、勝手に決めてるのママ!聞いてないわよ!」
「いい?あなたの通っている高校は仮にもこの国の名門校、その名に恥じないように成績を上げなきゃ・・ ほら、先生がやってきたわよ。」
家のドアの開く音・・・・・
「初めまして、リアル・ウィルトンと申します。」
青色のビー玉のような綺麗な目に、控えめな色のサラサラした金髪
きっちり折り目のついたスーツに蝶ネクタイ姿の美少年がドアの前に立っていた・・
これが、私エマ・ハーパーと、この無表情のロボットみたいな家庭教師リアル・ウィルトンとの
始めての出会い・・・・・
緑に覆われた中に、チョコンと立っているカトリックスクール、それがこの国の名門高校
ステラヘーゼル校・・・・
本当は私の学力じゃ入れないような高校だけど、中学3年にスパルタ塾に通い出してから
意地でも成績を上げなきゃいけなくて何とか入学できたんだけど・・・・
この国は伝統ある古風な階級社会が、現代でも根付いたままだからエリート校に入り、貴族の道を
歩まなくては将来が大変らしい・・・・
だけどさ・・・・・そのために学歴を上げなきゃいけないのは理解できるけど、なんで18歳の私よりも
年下な15歳のこの子に勉強を教わらなきゃいけないわけ?
ママ 「ウィルトン先生はね、この国最大の家庭教師サービス【イートンクレア】の中で最年少の先生なの。だけど最年少で新人なのに、今までに教えた生徒さん全て有名大学に合格させたのよ!すごいでしょ?こんな凄い先生にめったに教えてもらうことなんてできないわよ!」
エマ「いや、頼んでないし・・・・」
ママ「ささ、先生。早速2階の娘の部屋に上がって勉強を教えてあげてくださいな。今紅茶持っていきますから。」
リアル「それでは、エマお嬢様、参りましょうか・・・・」
済んだ声で呼びかけてくる・・・
く、なんでこいつ無表情なのよ・・・私を見下してるのかしら・・・
紳士なら、どんな容姿の女の子にでもまずは笑顔で接するのがこの国の礼儀じゃないの?
メガネでそばかすだらけの暗ーい私には笑顔を振りまく必要もないってこと?
これだから、イケメンは嫌いだ。
私は三次元のイケメンは断固として信用しない。
だけど二次元のイケメンは、私を裏切らないから例外だ!
そう!二次元イケメンアニメ、二次元イケメンゲーム!
これがあるから私は生きていける!
それが堅苦しい学校生活や親の期待の重圧から逃げられる唯一の時間だったのに・・・・
その時間が今、割かれようとしている・・・・
こんな無表情で何を考えているかわからない年下野郎に勉強を教わる時間に・・・・
地獄でしかない・・・
ちょっ・・・・・と待てよ・・・・・
エマ 「ああー!まだ部屋に入っちゃダメー!」
言う前に、もうリアルは部屋を開けていた・・・・
そう、私の部屋は二次元イケメンのポスターやフィギュアでいっぱいなのだ・・・・
知られたくなかったのに・・・・・
は~
エマ「軽蔑した?」
リアル「何をでしょうか?」
相変わらず、こいつは無表情だ・・・このヤバい部屋を見た時も顔色1つ変えなかった・・・
エマ「何ってこの部屋の・・・・・」
この国では二次元文化を趣味にしてるものは、現実世界を見れないオタクとして軽蔑の目で見られる。
リアル「おっしゃられてる意味がよくわかりません。」
なんだ、そのすかした声・・・腹が立つ!
エマ 「だから!私が二次元オタクなこと!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
リアル「・・・・・・・・・趣味は人それぞれと聞いております。エマ様がどんな趣味をお持ちでしょうと私にそれを否定する権利はございません。」
エマ「あ・・・・・・そう・・・・そうよね・・・・」
リアル「エマ様・・・床に何か落ちております・・・」
リアルがかがんで、それを取ろうとした。
あ、それは私がこの世で命よりも大切にしてる【ファイナルアイドルイケメン帝国】のセンターの
ジェームズ君の限定フィギュア!
エマ「触らないで!そのフィギュアは命よりも大切な私の宝物なの!」
リアル「申し訳ありません・・・・・」
何、こいつ・・・・・・まあ、どうせ心の中で軽蔑してるんでしょうけど・・・
にしてもこの家庭教師なんかロボットみたい・・・・
一切笑わないし、それどころか一切感情を見せない・・・・
なんなの・・・・
結局、こいつ・・・・2時間私に勉強教えていたけど1回も笑顔を見せなかった・・・
そして、前の塾みたく怒られもしなかったけど・・・・
私は覚えが悪いから、大体どんな温厚の先生もイライラして厳しく指導してくるんだけど・・・・
どんなに同じこと質問しても、こいつは変わらず済んだ声で丁寧に教えてくれた・・・・・・
とても年下とは思えない・・・・なんでこんなに落ち着いてるの?
リアル「エマ様」
エマ 「は、はい?!」
声が上ずる・・・ヤバい、ボーっとしてた・・・怒られるかな・・・・
リアル「私、明日からエマ様と学校生活を共にすることになります。」
エマ「は?」
リアル「エマ様の現在の学力では、測定してみましたところ、学校でも私が付き添ってご教授してさしあげなければ、志望大学には受からないという結果が出ました。」
エマ「う?」
リアル「ですので、明日からよろしくお願いします。」
え?ええええー!
次の日・・・・・
「あんなやつと一緒に登校して、変な噂でも立ったら大変、大変・・・」
私はいつもより、早く登校した。
どうやら、パパとママは家の部屋をあいつに1つ貸して、これから大学受験まで
泊まり込みで私に勉強を教えるように頼んだらしい・・・
冗談じゃないわ!
あんな、ロボットみたいな奴と、これから大学受験までの3ヶ月間一緒にいなきゃいけないかと
思うと息が詰まりそうになる!
せめて登下校ぐらい好きなアニメ主題歌でも聞いて現実世界から離れないと死にそうになる!
「あら、ミス・エマ!随分と急いでいるのね・・・・」
お高くとまったような見下した声・・・・
朝からこいつらに会わなきゃいけないとは・・・・・
ステラヘーゼル校の女性クラスのヒエラルキーのトップグループの長、アリアナ!!
銀色の長い髪に、雪のように白い肌が特徴のお嬢様だ。
一見優しそうな美しい容姿だが、心は悪魔のサディスティック野郎だ・・・・
今日も後ろに群れの女子生徒を従えながら、私をバカにしに来たのだろう・・・
アリアナ「ミス・エマ、今日はあの趣味の悪い二次元フィギュアはカバンにつけていらっしゃらないのね?」
は、そうだ、昨日部屋に落としてつけるの忘れてた・・・
アリアナ「あなたもようやく、あんな気持ちの悪いモノをつけていたらまともな殿方に相手にされないことがわかったのかしら・・・成長なさったのね、女性としての自覚を持っていただいて涙深いわ・・」
あんなものだと・・・・・こいつ・・・・
アリアナ「ついでに、そのそばかすやおダさいメガネもお辞めになったらいかが?せっかくの伝統ある名門校の淑女の印である美しい制服が台無しですわ。私たちもあなたのような人と同じ学校の人間と思われたくないの・・・あら、ごめんなさい、そばかすは直せないですわね・・・ホホホホホ・・・」
マジで張り倒したい・・・・でも、そんなことしたら、この女の父親は学校の理事長だし・・・・
その時だった・・・砂煙を立てて勢いよく何かが私に急接近してきた・・・
あ、あれは・・・・リアル?!
アリアナ「きゃあ!な、何!!」
リアル・ウィルトンは私の前に急停止すると、相変わらずの無表情でお辞儀をした・・・
てか、ステラヘーゼル校の制服よく似合っているな・・こいつ・・・・
あんなに走ってきたのに、息1つ乱してない・・・
「忘れ物です、エマ様・・・限定フィギュア、毎日カバンにつけて学校に登校していると
仰っていたので・・・申し訳ありません、触れるなとのことでしたので、手袋をはめて
触りましたのでご容赦くださいませ・・・」
こいつ・・・わざわざ届けてくれたの?
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