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カレーライスと涙
リアル「いえ、感情という言葉は知っております。しかし私は感情とは必要がないものと聞いております。」
エマ「ひ、必要ない?」
リアル「はい、人間の感情とは何か仕事や任務を達成する上では邪魔になる無駄なものと聞いております。ですので、私は感情というものを捨てております。」
エマ「いや、それロボットじゃん!じゃあ感情がないってこと?いくらあんたみたいに四六時中ずっと無表情な人間でも感情は捨てられないでしょ?」
エマは半笑いでそう言う。
リアル「感情を捨てる・・・・・意識したことがないのでわかりません・・・・ですが感情という無駄なものを取り除いた時、人は本当に完璧な仕事ができると聞いております。」
エマ「あんたさあ、さっきから【聞いております】【聞いております】と言ってるけど誰からそんなこと教えてもらったの?」
リアル「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
エマ「え?無視?」
リアル「・・・・・・・わからないのです。私も誰にご教授いただいたのか・・・誰が私に教えてくださったか・・・」
エマ「何、それ?」
エマは、理解不能なリアルにあきれ、もういいや と言わんばかりに立ち去っていった。
エマ「じゃ、今日も放課後よろしくねー」
リアル「かしこまりました。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
リアル「エマ様、そこが違います。この方程式を・・・」
エマ「ええ、もうわかんないよ!!」
家に帰った2人は、早速勉強を始めていた。
ったく、こいつ私が逃げようとしてもどこからでも追ってきやがる・・・・
なんで、こいつ私が逃げようとしてる所わかんの?
エマはネカフェにでも逃げようとしたが、行く先々でリアルが待ち構えていた。
エマ「あなた、よくわかるわね、こんな問題、高校に通ってもいないのに・・・・」
リアル「私は、飛び級ですでに大学の全過程まで終了しております。」
エマ「と、飛び級で!」
どんだけ、優秀なんだよ、こいつ・・・・・
そんなこんなで、夜まで勉強・・・・・・
ぐ~~!
エマのお腹が鳴る・・・・・・
エマ「あ・・・・・・・・・」
リアル「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
エマ「てへ。」
恥ずかし・・・顔が赤くなり、誤魔化すエマ
リアル「空腹でございますか?」
エマ「う、うんちょっとね・・・」
リアル「左様でございますか・・・では少々お待ちください。」
エマ「え?」
リアルは静かに階段を降り、ママのもとへ向かう。
リアル「お母様、少々台所と冷蔵庫の食品をお使いしてもよろしいですか?」
ママ「あら、まだ起きてたの?いいわよ、でも勉強もほどほどにしてやってね。」
リアル「ありがとうございます。承知いたしました。」
エマ「い、いいよ、別に夜食なんて・・・・」
リアル「腹が減っては戦もできぬと聞いております。軽く何かおつくりしますのでエマ様は少々お休みになってください。」
エマ「でも・・・・」
ママ「先生に甘えたらどう?先生のプロフィールにはね、料理も得意って書いてあるのよ。きっと美味しい夜食を作ってくれるわ。」
料理もできるの?本当に完璧なんだ・・・・・・
どん!!カレー・・・・・・
あれ、軽い夜食じゃなかったけ・・・・カレーって・・・・
エマ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
リアル「お口に合いませんでしたか?来たるべきエマ様の空腹のために、エマ様の味覚のデータも事前に把握しておいたのですが・・・・」
エマ「い、いや、そうじゃないんだけどね・・・・」
リアル「お口に合わなかったのなら、またおつくりし直します。」
リアルは皿を持ち上げ、また台所に戻ろうとする。
エマ「あ、いや違う、違う!いや軽い夜食だっていうからカレーが出てきてビックリしただけ!
とっても美味しいから大丈夫だよ!戻さないで。」
ホントに美味しい・・・・まるで、私の好みを全てわかったかのような美味しさ・・・・
なんで、こいつは・・・・なんで、こいつは・・・・・
なんでも、できるの・・・・
ずるいよ・・・ずるいよ・・・神様・・・・・
突然、エマから涙が出てくる・・・・
リアル「エマ様・・・・・いかがいたしましたか?」
エマ「ううん、なんでもない・・・」
リアル「しかし、涙が出てくるのはご気分や体調が優れない時と聞いております。やはり、カレーの味が悪かったでしょうか?」
エマ「なんでもないってば!!」
エマの高ぶった感情が爆発する・・・・・・・・・・・・・
リアル「エマ様・・・・・・・・」
エマ「ずるいよ・・・・リアルは・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
エマ「勉強も運動も、おまけに料理まで完璧にこなしちゃってさ・・・・私より年下のくせに・・・・・くらべちゃったら私は何もできない・・・一緒にいて恥ずかしいよ・・一緒に学校に行くの恥ずかしいよ・・・だって対等じゃないんだもん・・・釣り合わない・・・・」
リアル「エマ様・・・・・・・・・・・・・・」
エマ「悔しいよ・・・・・・・私なんか何作っても失敗するもん・・・・・」
エマは体育座りでうつむき、泣いた顔を隠す。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
リアル「エマ様・・・・・」
リアルはエマの手を掴み、ハンカチを渡した。
リアル「もうお疲れでしょう。今日はカレーを食べ、お休みになってください。」
エマ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
リアル「私は、何もかもできるわけではございません・・・・覚えたことをただ実行しているだけです。」
エマ「それが、できないからこっちは辛いのよー!!」
エマは泣きながら、カレーをかきこむ・・・・
悲しくても、出されたものは食べるんだ・・・・
リアル「エマ様・・・・・・・」
やがて、エマは泣いて疲れたのか、腹いっぱいになったのか、眠りについてしまった・・・・・
リアル「やはり、食事は人を眠りにつかせるようですね・・・量のさじ加減が必要だ・・・」
エマの寝顔を見ながら、リアルはフッと笑った・・・・・
始めて見せた笑顔だった・・・・・
リアル「!!」
リアルは気づいた・・・・・
自分の動かなかった心の奥が、揺らぎ始めているのを・・・・・・
なんだろう、これ・・・・・・
前にもこんなことが・・・・こんな記憶が・・・・・・
人との触れ合いが楽しいと感じた・・・・・
失った何か・・・・・
そう、リアルの中で感情というものが顔を出した瞬間だった・・・・・
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