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岩倉が、話し続けた。
「松田は、すぐに病院へ運ばれたんだが、即死だった・・。君も現場で、松田が倒れている所に遭遇したらしいから、その時に見たと思うが・・。特に顔の外傷が酷く、首の骨を折られていた。」
貴志の顔色が真っ青になり、何も言えずに震えている。
「アイツは、優秀な刑事だった。」
岩倉が、残念そうな顔で言った。
貴志は、体を震わせながら、涙を流す。
「・・松田さん。」
「松田の死を無駄にしない為にも。君のお母さんの為にも。そして今後、同じような犠牲者を出さない為にも、我々は全力で犯人たちを捜査している。必ず捕まえるよ。」
岩倉が、諭すように言った。
貴志は、涙を拭いながら頷く。
「貴志くん。君は実際に、犯人たちと近づき、接触もしている。捜査をうまく進める為にも、今後情報など協力してくれないか。」
岩倉が依頼すると、貴志はしっかりと返答した。
「・・はい! もちろんです!」
「あと先程、お母さんを担当している医者に話を聞いたんだが。お母さんは今後、どうなるか分からない状態だと教えてくれたよ。辛いだろうけど、一緒に諦めずに頑張ろう。」
岩倉は、貴志を励ますように言う。
そして真剣な表情になって、話題を続けた。
「ただ一つ。不思議な事があって・・。この事件で、これまでの犠牲者と、松田もそうだったが。外傷が酷くて、体の各部数ヵ所がダメージを負い、死に至っていた。しかし、君のお母さん、叶恵さんは、見ての通り外傷が全くない。これが分からないんだよ。」
その話しで、貴志も付け加える。
「確かに。それは主治医の先生も言っていました。外傷がないから、おそらく直接脳か、心臓へのダメージだろう、って。」
「我々も、この不思議な違いの真相を探っていくよ。容疑者の四姉妹と、何か関係があるかもしれない。」
岩倉は、探偵よろしく推理を考えた。
「そうですね。しかし、あの四姉妹は、今どこにいるんでしょう?」
貴志が投げかける。
「我々も、あの別荘付近を隈無《くまな》く、捜索したんだよ。そしたら、別荘の隅の茂みの部分が、隠れ通路になっていた事を発見した。その茂みを進んでいくと高台だった崖を段々と下っていき、やがて下の海岸へと辿り着いた。そこで行き止まり。つまり推測すると、犯人たちはおそらく、船を使って逃げたと思う。」
「船で? そうだったんですね。」
話を聞きながら、貴志が納得した。
「犯人は車を、2台とも別荘の敷地内に乗り捨てていってる。」
岩倉が付け加える。
「という事は、もしかして、もう海外へと逃げてしまったんですかね?」
心配して、発言する貴志。
岩倉は、鋭い表情で見解を述べた。
「いや・・。ヤツらはまだ、日本にいる。俺は、そう思ってる。」
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