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「ええ〜? もう焼けてるだろう? 俺はもう食うぞう。食うからなあ……」
すると今度はヒューゴーの左どなりに座る、くたびれたボイナ(※ベレー帽)をかぶる小太りのリューフェスが、テリー・キャットの制止も無視して手にしたフォークを肉へと遠路なく伸ばす。
「んじゃ、俺も食あべよっと!」
「あ、コラ! まだだ! まだ待つんだ!」
「あ、ちょ、ちょい! おい! 押すなよ! 押すなって言っるだろ!?」
だが、それにつられて再びヒューゴーも肉へと手を伸ばし、制するテリー・キャットも実力行使に出ると、薪から立ち上る香ばしい煙に燻されながら、三人は組んず解れずの大騒ぎを演じ始める。
「おい! 押すなよ! 押すなよ…うわっ! 熱ちちちちちちっ…!」
と、もつれる二人に押される形でリューフェスは前のめりに倒れ込み、焼けた肉に顔を埋めるとその熱さにのたうち回った。
「ちきしょー! 訴えてやる!」
火傷と怒りに顔を真っ赤にしつつ、リューフェスは飛び上がるようにして起き上がると同時に、帽子を床に叩きつけて声を荒げる。
「訴えるって誰にだよ? 俺達ゃあこのトリニティガー…いや、新世界一の大悪党だぞ? 訴えりゃあ、てめえら自身が縛り首だ」
「……あ、そうでした。どうも、怒ってごめーんね。くるりんぱ…っと」
だが、醒めた眼のテリー・キャットにそう言われ、冷静さを取り戻したリューフェスはおどけた調子で二人に謝ると、投げつけた帽子を拾い上げて被り直す。
「……て、んな遊んでる場合じゃないんだよ。話を本題に戻す時だな、ビッグな大悪党である俺達ダックファミリーが、なんか毎回、噛ませ犬にされてねえかって話だよ」
そして、散らかったバーベキューセットを元に戻すと三人は再び席につき、リーダーのヒューゴーが改って話を始める。
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