Ⅰ モブの野心

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「ええ〜? もう焼けてるだろう? 俺はもう食うぞう。食うからなあ……」  すると今度はヒューゴーの左どなりに座る、くたびれたボイナ(※ベレー帽)をかぶる小太りのリューフェスが、テリー・キャットの制止も無視して手にしたフォークを肉へと遠路なく伸ばす。 「んじゃ、俺も食あべよっと!」 「あ、コラ! まだだ! まだ待つんだ!」 「あ、ちょ、ちょい! おい! 押すなよ! 押すなって言っるだろ!?」   だが、それにつられて再びヒューゴーも肉へと手を伸ばし、制するテリー・キャットも実力行使に出ると、薪から立ち上る香ばしい煙に燻されながら、三人は組んず解れずの大騒ぎを演じ始める。 「おい! 押すなよ! 押すなよ…うわっ! 熱ちちちちちちっ…!」  と、もつれる二人に押される形でリューフェスは前のめりに倒れ込み、焼けた肉に顔を(うず)めるとその熱さにのたうち回った。 「ちきしょー! 訴えてやる!」  火傷と怒りに顔を真っ赤にしつつ、リューフェスは飛び上がるようにして起き上がると同時に、帽子を床に叩きつけて声を荒げる。 「訴えるって誰にだよ? 俺達ゃあこのトリニティガー…いや、新世界一の大悪党だぞ? 訴えりゃあ、てめえら自身が縛り首だ」 「……あ、そうでした。どうも、怒ってごめーんね。くるりんぱ…っと」  だが、醒めた眼のテリー・キャットにそう言われ、冷静さを取り戻したリューフェスはおどけた調子で二人に謝ると、投げつけた帽子を拾い上げて被り直す。 「……て、んな遊んでる場合じゃないんだよ。話を本題に戻す時だな、ビッグな大悪党である俺達ダックファミリーが、なんか毎回、噛ませ犬(・・・・)にされてねえかって話だよ」  そして、散らかったバーベキューセットを元に戻すと三人は再び席につき、リーダーのヒューゴーが改って話を始める。
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