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「そうだなあ、この前もオクサマ要塞の偵察に使われた挙句、捕まって危うく縛り首にされかかったからなあ……」
「確かに。こんなに俺達ビッグなのに、これといって話題になるような大仕事したなことないもんな」
不意に難しい顔をして語るヒューゴーの問題提起に、両どなりのテリー・キャット、リューフェスもそう言ってうんうんと頷く。
この、小汚い恰好をした船乗り風の男達……自分達では〝ビッグな大悪党〟と思い込んでいるものの、実際はコソ泥や臨時の海賊の手下なんかをしているだけの小者のチンピラ、〝ダッグファミリー〟である。
ま、このトリニティーガー島でもど底辺に位置する、紛うことなきモブキャラだ。
「そう! そこなんだよ! 俺達に必要なのはビッグな俺達に相応しい、世間で評判になるくらいのでっけえビッグな成果だ!」
リューフェスの発言にヒューゴーは手をポン! と打つと、我が意を得たりというように声を大にする。
目に見えて典型的なモブである彼らダッグファミリーではあるが、それでも三人は身の程知らずに、日々、のし上がるべく分不相応な野望を熱く胸に抱いているのだ。
「ビッグな成果かあ……でもよお、何やりゃあ世間で評判になるんだ?」
「やっぱり有力な海賊の船長達みてえにエルドラニアの商船襲うとか、要塞を襲撃して落とすとかか?」
ヒューゴーの言葉を聞いて、テリー・キャットとリューフェスの二人も似合わぬ小難しい顔をすると、むんずと腕を組んで真面目に考え込む。
「ビッグな成果だかなんだかしらねえが、金ができたんなら溜まってるツケを払ってもらおうか? でねえとてめえらの肉をお客様に提供することになるぜ?」
だが、そうした三人の頭上から、不意に野太い男の声が聞こえてくる……見上げれば、そこにはガタイの良いこの店の店主が血に塗れた白いエプロンを着け、手には大きな肉切り包丁を持って立っていた。
「ひっ……!」×3
「てめえら、どんだけツケ溜まってると思ってんだ! 細切れ肉になりたくなかったら今日こそ今までの飲み食い代を払いやがれ!」
猟奇殺人鬼が如きその姿に三人は顔を青褪めさせるが、店主は包丁をチラつかせながら無銭飲食に等しい彼らを大声で脅しあげる。
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