第一章:憎愛の浄化

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「水科さん? その人と私が会わなくちゃいけない理由は何?」  初めて耳にする名前で、どんな性格の人なのか想像もできない。  美都羽と友達になるような人物なら、さほど警戒しなくてはいけないような――所謂(いわゆる)問題児と呼ばれるような――相手ではないだろうけれど、あからさまに歯切れの悪い美都羽の言い方に引っかかるものを感じ取り、つい問い詰めるような口調で問いを(ほう)ってしまった。 「うん、ちょっとその子最近悩んでることがあるみたいでさ。結構深刻な感じなんだよね。それで、もし迷惑じゃないなら泉仍に相談させてもらえないかなって思って」 「悩み? それってひょっとして、“仕事”絡みの案件ってこと?」 「……うん。わたしは素人だから、断言はできないけど。話を聞いてみた限りだと、たぶんそうなのかなって」 「……ふぅん」  参ったなと、胸中で呟く。正月くらいは自由に時間を使えるだろうと思っていたのに、どうやら予定外の依頼が舞い込んでしまうようだ。
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