第二章:口渇の原因

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 そう説明をしてくる穂奈江さんの前には、少しだけ水の残ったコップが置かれていた。 「あまり飲み過ぎると、お腹を壊してしまうのでなるべくは我慢しようとは思うんですけど、どうしても駄目なんです。すぐに渇きが限界になってしまう感覚に襲われてしまって、自制心がきかなくなってしまうんです」 「……熱があるっていうのは、どれくらいですか?」 「わたしの平熱は三十六度くらいのはずなのですが、今は三十七度六分ほど。夜になると三十八度前後までは上がります。でも、咳や吐き気などはないので、風邪とは思えないんです」  先生の身体にまとわりついていた残滓から、熱のイメージは一番強く伝わってきていた。  故に、穂奈江さんが受けている霊障も、それに準ずるものだろうと確信を持っていたが、間違えてはいなかったようだ。 「因みにですけど、その症状が出始める直前、何か普段の生活では取らないような行動……例えば、初めての場所へ旅行に行ったとか、興味のないお店に足を運んだとか、そういうことはしていませんでしたか?」
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