第一章:憎愛の浄化

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 そろそろ(ぬる)くなってきているであろうお汁粉のプルタブを開け口をつける妹を視界の端で確認しながら、私は(たしな)めるように小声を返す。 「夢愛、私たちのしている仕事をそういう風に考えるのは、あまり褒められたことじゃないと思うわ」  私たち姉妹が、生まれつき持ってしまった特殊な力。働かないお父さんの代わりにと、その力を利用して高校へ進学すると同時に始めた今の仕事は、お小遣い欲しさのアルバイトみたいな感覚でこなして良いものでは決してないと、私はそう自覚している。  一人の人間に対する敬意や、人生というものに払うべき尊重。そういったものを大切にしながら、依頼と向き合う。  それができなければ、この仕事を続ける資格はないはずだ。  そういう特殊な仕事を、私たちはしている。  そういった自覚をもう少し夢愛にも持ってほしいと思うのだが、私よりも楽観的な妹にはどこまで伝わっているものなのか。 「別に、仕事を軽く見てるわけじゃないよ。でも、お金だって大事じゃん。高校出たらさ、あたしたち今よりもっと必要になるんだよ? 今のうちから貯められるものは貯めていかなきゃでしょ?」
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