第一章:憎愛の浄化

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          2  朝食に御雑煮を作って食べた後、友人との待ち合わせに指定したコンビニへ出発したのは、九時を少し過ぎた頃だった。  元旦の朝だからなのか、外を歩いていても普段ほど通行人の姿を見かけない。  きっと、昨晩は家族や友人たちが集まり、一年で最後の夜を賑やかに過ごしながら日付を跨いだ人が大半なのだろう。  元旦の朝くらいはゆっくりとしていたいという考えの人は珍しくもないだろうし、この程よい静けさに満たされた街並みも、そういった事情によって生み出された空間なのかもしれない。  悪くないなと、白い息を吐きながら澄んだ冬の青空を見上げる。  順応できないわけではないけれど、騒がしい場所が苦手な身としては、静かに歩ける空間は非常に心が落ち着く。  時折、側溝(そっこう)の中から血の付いた顔が覗いていたり、空き家になっている窓に身体全体が真っ白い女性が張り付いていたりする光景も視界の端に映るけれど、それらは見慣れたモノであるし生きた人間のイベントである正月とは無縁の存在であるため、あくまでも風景の一部として処理ができる。
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