彼氏くんと彼女ちゃんの話 10

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***** 「兄ちゃんはさー、もうチューとかしたの?」 バレンタイン前日こと二月十三日の晩御飯時。 ませた弟がそんな事を聞いてくるから味噌汁を吹きそうになった。 「あらー、お母さん、耳ダンボだわーうふふ」 見れば、母親もなんとも言えない笑いを浮かべながらこちらを見ている。 いや弟、そんな話題を親がいる時に振ってくるな……! 「……あ~……まだだな」 「うーん……まだのようね」 母と弟が顔を見合わせている。 なんなんだ、自分が悪いかのようなこの雰囲気……。 何故身内から彼女とのことをつつかれて、赤面しなければならないのだ自分は。 「うっるせ! 中学生、それなりに忙しいんだよ!」 「えー、デートらしいデートに二回も行ってるのに? 近所の花火もいれたら三回だよね? 二人っきりの時間ってあったじゃん」 「なんで二人になったらそっち方向に行かなきゃいけないんだよ! まだ中学生なんだぞ?」 さっき中学生は忙しいと言っておいて、今はまだ中学生だからと言っている、なんだか中学生を言い訳にしているような気もした。 「いや、むしろ硬派なあんたは貴重だと思うよ母さんは。 いいんじゃない、あんたがそれでいいんなら、それで。 親としてはむしろ安心だし。 ……ただ、彼女としてはどうかなーとは思うけど」 ……彼女としては……? その言葉が引っかかって母のほうに顔を向けると、母は目を細めてこちらをじっと見ていた。 「……いい子なんだから、大事にしたげなさいよね」 「おぉお、母ちゃん、それ応援してるの牽制してるの?!」 「やかましわっ」 弟の発言に、母と自分と声が重なった。
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