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「兄ちゃんはさー、もうチューとかしたの?」
バレンタイン前日こと二月十三日の晩御飯時。 ませた弟がそんな事を聞いてくるから味噌汁を吹きそうになった。
「あらー、お母さん、耳ダンボだわーうふふ」
見れば、母親もなんとも言えない笑いを浮かべながらこちらを見ている。 いや弟、そんな話題を親がいる時に振ってくるな……!
「……あ~……まだだな」
「うーん……まだのようね」
母と弟が顔を見合わせている。 なんなんだ、自分が悪いかのようなこの雰囲気……。 何故身内から彼女とのことをつつかれて、赤面しなければならないのだ自分は。
「うっるせ! 中学生、それなりに忙しいんだよ!」
「えー、デートらしいデートに二回も行ってるのに? 近所の花火もいれたら三回だよね? 二人っきりの時間ってあったじゃん」
「なんで二人になったらそっち方向に行かなきゃいけないんだよ! まだ中学生なんだぞ?」
さっき中学生は忙しいと言っておいて、今はまだ中学生だからと言っている、なんだか中学生を言い訳にしているような気もした。
「いや、むしろ硬派なあんたは貴重だと思うよ母さんは。 いいんじゃない、あんたがそれでいいんなら、それで。 親としてはむしろ安心だし。
……ただ、彼女としてはどうかなーとは思うけど」
……彼女としては……? その言葉が引っかかって母のほうに顔を向けると、母は目を細めてこちらをじっと見ていた。
「……いい子なんだから、大事にしたげなさいよね」
「おぉお、母ちゃん、それ応援してるの牽制してるの?!」
「やかましわっ」
弟の発言に、母と自分と声が重なった。
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