彼氏くんと彼女ちゃんの話 10

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大体。 明日は普通に平日で。 確実に一緒になる時間はむしろ朝の登校中しかない。 あれ、では去年はどうやって彼女からチョコをもらったんだったか……去年なんて、朝の登校も別だったのだ。 思考を一年前に飛ばす。 ……そうだ、朝に登校して昇降口で上履きに履き替えた時だ、かわいいメモ用紙が入ってたんだ。 『三限のあと、図書室前の階段を上ってきてください 歩実』 これを見た時、正直にいって感心した。 彼女とはクラスが別だ。 自分のクラスはその日、一限は理科で教室を移動だった。 二限は音楽で、これまた移動だ。三限は数学、四限は国語……しかし四限後は弁当、昼休みに入る。 昼休みでも良かった訳だが、生憎五限は体育。 その日は移動の嵐の日だったのだ。 彼女が三限を選んだあたりの配慮が気に入った、時間割をちゃんと調べてくれていたのだろう。 いや、気に入ったもなにも幼馴染みだ。 そう、彼女はちゃんと名前を書いていた。 誰だかも分からない奴に呼び出しされるのは、やはりいい気はしないものだ。 悪戯の可能性だってあるのだから。 そわそわと三限の数学の後に、三階の図書室前の階段をあがっていったのを覚えている。 ……バレンタインに呼び出しされたら、やはりそういうことだろう。 そして屋上につづくドアの前の踊り場で、やっぱり顔を赤くした彼女が小さくて薄めの包みを持って佇んでいた。
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