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【――――――ところでサクヤ、あなた、避妊とか病気の予防はしっかりしなさいよね】
【…おい】
あまりにも打って変わった話題に、思わず辺りを見回してしまう。
【ちゃんと周りは見ているわよ。まあ、あなたはまだ14歳だし、しかもこの学校、性行為に至るのは校則違反なんでしょう? 退学なのよね? ならきっと、あなたなら最後までしないとは思うけど、女の子と関わるのなら、ちゃんと伝えておかなくちゃって思って。いいこと? 挿入しなくたって妊娠の確率はゼロじゃないし、病気なんて舐め合いっこで移る事もあるんだから】
【…マリー、なんでそう赤裸々に語ってるの。しかも内容具体的過ぎだし】
こういう話に、マリーは昔から疎かった。
というより、年の離れたジェズには現実かもしれない話題として、徹底的に避けてきた感じ。
【それは…】
マリーの手が離れて、遠くなる。
【ジェズから、講義を受けたの】
【…は?】
【学校での保健授業。外部からお招きしていた講師の方が急病で来れなくなって、その方の後輩だったらしいジェズが、ピンチヒッターで颯爽と登壇したのよ】
…最悪だ。
【最後に質疑応答があって、そういう下世話な話にもオブラートに包んできちんと答えてくれたわ。私生活をほんのり香らせた感じで】
そして悲惨…。
【すべての予定を終えた後、見回した生徒の中に私を見つけた時のジェズの顔ったら、――――――なかったわぁ…】
遠い目をするマリーに、同情を禁じ得ない。
それでも、さっきのジェズ賞賛のセリフを聞く限り、マリーが諦めるなんて未来はなさそうだけど。
【なんていうか…マリーも頑張って】
【もちろんよ。まだ誰のモノでもないんだもの。私だって、もう立派なレディよ。大人の女の魅力満載でガンガン攻めていくわ。――――――来年くらい、から…】
どうやらマリーは、まだ自分に合格点を出せてはいないらしい。
ジェズに釣り合うとされるそんな点数の採点を一体誰が担当しているのか、要はマリー自身の問題だ。
こればかりは、他人がどうこう言っても本人が乗り越えない限りは動けないだろう。
【マリー、久しぶりに会えて良かったよ。元気出た】
【私も。気分転換になったわ。――――――良い街ね】
【だろ?】
滞在時間四十分。
私にも学校があるのだと告げて、マリーはさっさと帰って行った。
サネハルが初めて講義の時間をすっぽかした日から、一度も繋がっていないオンライン。
コミュニケーションツールはいつもアクティブで、OSさえ起動していれば、いつだって接続が可能だった。
時間を守るという前提で、サネハルは誰にでもアクセスルートを開いていた。
今は、カメラはずっと、オフのまま。
「あ」
『――――――え?』
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