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そういえば、こんな出来事があった。
あの夜から、1ヶ月も経たないくらいの時。
昼休み、教室の自分の席で、本を読んでいる俺に、隣のクラスの松村が近付いて来た。
その気配を感じ、何か用かと松村に目を向けた。
「こないださ、お前の母親が男と歩いてるのを、S駅近くで見たんだけど。
俺もチラッとしか見てないんだけど、絶対にお前の母親だったし、一緒に居た男、お前の父親じゃなかった」
近所に住んでいる松村も、俺の両親の顔を知っている。
俺がこいつの両親の顔を知っているように。
「なんかさ、滝沢お前って、あんまり父親に似てないだろ?
その母親と一緒に居た男の方が、お前に―――」
松村のその言葉を最後迄聞く前に、
俺は立ち上がり松村の学ランの胸元辺りを掴み、
殴っていた。
幼い頃、数種類の武術を習っていた俺は、そうやって体が動いてしまった。
いつの間にか、松村に馬乗りになって、殴っていて、
同じクラスの男子数名が、俺を松村から引き離すようにして取り押さえていた。
松村は、それで鼻の骨や頬骨を骨折したらしく、全治2ヶ月だと病院で診断された。
その事は、それなりに問題となり、松村の親が騒いでいたが、
それは、俺の父親が金で解決してくれた。
学校の方も、クラスの何人かが、松村から俺に絡んでいたと、話してくれて、
叱られるくらいで済んだ。
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