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俺は表向きは優等生だけど、篤と仲良くて不良グループに居たからか、
個別に担任の加賀(かが)という若い女教師に呼び出される事があった。
その話し合いは、生徒指導室で2人っきりで行われていて。
「滝沢君、このままだったらいつか取り返しのつかない事が起こるかもしれないわよ?
北浦君も悪い子ではないのかもしれないけど、
彼とは、適度な距離を保って接するべきよ。
現に、こないだも滝沢君、松村君に暴力振るった事があったばかりだし」
その言葉は、ある意味俺の事を心配してくれているのかもしれないけど。
ただ、この人は素行の悪い篤の事が嫌いなのだろう。
少し前に、数学の時間、加賀先生と喧嘩になったと前に篤が言っていた。
加賀先生は俺のクラスの担任だけど、
数学は二年の全クラスを担当していて、
だから、篤のクラスの数学も加賀先生が受け持っている。
俺は、着ていた学ランの上から順に三つ程ボタンを外すと、
逃げるように生徒指導室から出た。
そして、ちょうどそこを歩いていた男性教師に、助けて下さい、と駆け寄った。
「えっと、滝沢?
一体、どうした?」
「―――加賀先生が、急に俺の制服を脱がそうと…」
そう言って、床にしゃがみこみ、
顔を両手で覆った。
その手の中で、笑いを噛み殺していた。
俺を追い掛けるように、加賀先生が生活指導室から出て来たのが、足音で分かった。
「加賀先生、あなた一体何してるんですか?!」
男性教師のその非難の声で、少し笑い声が漏れてしまったけど、気付かれなかった。
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