結婚指輪

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初めて足を踏み入れる、斗希の部屋。 妙に、ドキドキとしてしまう。 部屋の端にはシングルベッドがあり、 書斎机もある。 わりと広い部屋なのだけど、それを狭くさせているのは、大きな二つの本棚。 その本棚では追い付かないのか、 部屋のすみに積み上げている透明の収納ケース。 その中身は、本。 きっと、その収納ケースの本は、 元々私の部屋に置いていたのだろう。 全体的に、ブラウンで統一された、その斗希の部屋。 「なに?じろじろ見て。 けど、本当に結衣はこの部屋に入らなかったんだ」 キョロキョロとしている私の様子から、 そう思ったのだろう。 「だって、斗希、部屋に絶対入るなって」 「見られて困るものはないけど、 勝手に触られて、置いてる場所が変わるのが嫌だから。 ちゃんと元に戻してくれるなら、俺が居ない時でも、本とか勝手に持ち出してくれていいから」 「え?本当に?」 その提案に、思わず声が弾む。 それに、斗希もクスクスと笑っている。 それがなんだが恥ずかしくて、 私は本棚に近付き、斗希に背を向けた。 斗希の部屋の本棚は、本当に魅力的で。 一瞬見ただけで、読みたいと思う本が、沢山あった。
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