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朝、目が覚めると、
私は裸のままで、斗希に腕枕をされ、
後ろから抱き締められていた。
目の前にある、斗希の左手に私の右手を重ねると、
ゆっくりと握られて、驚いた。
「起きてるの?」
驚いて、訊いてしまう。
「うん。少し前に目が覚めた。
いつもこれくらいに起きてるから」
後ろから聞こえるその声に振り向きそうになるけど、
カーテンの隙間から漏れる朝日で明るいこの部屋で、
今、斗希と顔を合わせるのが恥ずかしい。
「あれだよね。
指輪買わないと。
結衣とお揃いの結婚指輪」
「え?」
斗希の左手の薬指を、触る。
私もそうだけど、そこには何もなくて。
「また、土曜日か日曜日に休み取る。
一緒に、買いに行こう」
「うん」
今まで、指輪の事なんて全く頭になかった。
もしかしたら、斗希は形式的に多少は頭にあったかもしれないけど。
お互い、それを必要に思わなかったから、
それを買うなんて考えなかった。
今、私はそれを必要としていて、
そう提案してくれた斗希も、私と同じだろうか?
「結衣、今日の朝御飯、ご飯と納豆だけでいい?」
そう訊かれ、思ったより朝寝坊したのかと思ったけど。
「朝から、もう一回していい?」
その言葉で、そういう事か、と思った。
斗希は既に私の胸に触れていて、それは始まっていて。
私も、そのままその流れに身を委ねた。
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