不穏

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「ごめん…」 斗希は手を伸ばし、私の首に触れる。 「なんだか、混乱して。 泣いてる梢ちゃん見てたら結衣が許せなくて。 それに、結衣がそんな事をしたのかと、裏切られたような気がした。 最近、俺達上手く行ってると思っていたから」 「うん…」 「けど、一番は…。 俺、どっかで、こうなる事を望んでいた。 結衣と篤の事が、梢ちゃんに知られればいいのにって。 そんな自分が許せなくて、結衣に自己投影したのか…ごめん…」 斗希はそう言うと立ち上がり、そのまま自分の部屋へと入って行った。 私は、それを追いかける事は出来ない。 その壊れそうな斗希の背を見ていたら、先程みたいに簡単に抱き締める事が出来なかった。 今、優しくしたら、さらに自責の念を持たせて、斗希を壊してしまいそうで。 斗希は今まで沢山の人を傷付けて来たけど、 その度、自分自身も傷付いていたのだと、円さんの件と川邊専務の今日の出来事を見ていて、気付いた。 だけど、斗希は他人を傷付ける事を辞められないのだろう。 自分も傷付くのに、なんで。
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