もう一人の復讐者

2/21
2634人が本棚に入れています
本棚に追加
/268ページ
私は、斗希の部屋の扉を開けた。 その瞬間、息を飲む。 部屋の中は、滅茶苦茶に荒れていて。 散乱した本や物で、足の踏み場もなくて。 それは、斗希の心の中を現しているようだった。 私も斗希も今苦しいのは、何も罪もない人達を傷付けて。 その事に、私達が苦しいなんて思う事は、筋違いなのも分かっている。 だけど、苦しくて――…。 リビングに、機械的な音が響いた。 それは、一般的なチャイムの音とは違うけど、来客を知らせるもの。 私は、リビングにあるインターホンのモニターに近付き、確認する。 そこには、女性が写っていて。 歳は30歳くらい? 第一印象は、派手だな、という印象。 「はい」 私は迷いながらも、応答した。 『斗希さんの奥さん? 斗希さんは?』 斗希の知り合いなのだろうか? 「斗希は仕事ですけど」 本当に仕事かどうか分からないけど。 それも伝えた方が、いいだろうか? そもそも、知り合いなら、携帯の番号くらい知っているだろうし、 斗希に連絡してないのだろうか? 『そう。 ねぇ、斗希さんの事で奥さんに話があるんだけど。 部屋に入れて』 そう笑う顔は、斗希が仕事で居ない事を知っていたのではないだろうか? この人の用があるのは、私? 「―――分かりました」 私は、エントランスのオートロックを解除した。
/268ページ

最初のコメントを投稿しよう!