手切れ金

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その人は、私が生まれて初めて本気で愛した人。 「結衣(ゆい)の肌は温かくて柔らかいな」 一糸纏わぬ姿の私の上で、彼、眞山綾知(まやまあやとも)も何も身に付けない姿で、私の肌を撫でる。 それは、手であったり舌であったり。 「---あ、社長」 「また、社長って呼んだ」 耳元でクスクスと笑うその声が、こそばくて体に力が入る。 大きな手で、私のその部分に触れ、確かめると、彼自身が私の中へと入って来る。 それと同時に感じる快楽に、私の体にさらに力が入る。 お互いの呼吸が激しく乱れ、それと同じように激しく揺れる体。 大きなダブルベッドの上。 此処は、都内のラグジュアリーなホテル。 「愛してる、結衣」 体を重ねながらそう囁かれた言葉を、 この時は、微塵も疑う事なんて無かった。 大会社の社長である彼が、ただの秘書である私に"本気"なわけなんて無かったのに。
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