手切れ金

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手切れ金

「もう諦めたらどうですか?」 冷たく言い放つその顔。 私に対する、嘲りが滲んでいる。 「あなたも大人だから分かるでしょ? 遊ばれていたんだって」 その言葉が、私に絶望させる。 「貰える物貰って、大人しく引き下がって下さい」 私とこの男の間にあるテーブルの上には、 厚みのある茶封筒---…。 許せない…。 そう思ったのは、私を遊んで捨てた男ではなく、この目の前の男。 その茶封筒の横には、最初にこの男に差し出された名刺が置かれている。 弁護士だと名乗り、彼の代わりにこの男が別れ話に来た。 滝沢斗希。 たきざわとき…。 私が復讐する、その男の名前。
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