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僕は約束の時間より少し早めに、その場所に着いた。
穏やかな光が降り注ぐ、とある田舎町。映画で見たことのあるような、何十段もの階段が続く場所だ。
今日はここで待ち合わせをしていた。あることを実行に移すために…。
いよいよその日がやってきたのかと、僕は階段の最上段に座り、下を眺めながら思った。
「馨はほんとに来るだろうか」
僕は思った。
馨と出会ったのはSNSだった。
年齢も同じですぐに意気投合した。
僕はある重大な悩みを持っていた。
それは自分だけの悩みと思っていたのだが、馨も実は同じ悩みを持っているとわかった時はとっても驚いた。
しばらくして初めて直接会った時、その美しさに見とれてしまった。さらに「私、馨といいます」と言われて驚いた。
なぜなら僕も薫という名前だったからだ。漢字は違うけど同じ読みの名前、こんな偶然の一致なんてあるのだろうか。
お互い話すうち、僕は前々から思っていたあることを実行しないかと誘ってみた。
「そんなことがほんとにできるの?」
馨は聞いてくる。
無理もない。
僕が提案したことは常軌を逸した行動かもしれない。普通なら理解できることではない。ただ命をなくしてしまうだけかもしれない。
馬鹿げた話だが、僕は何度も夢の中でお告げを下されていたのだ。これをやればきっとうまくいくと…。
結局、馨も納得してくれた。
死にたくなるくらい悩んでいたからだ。藁にもすがる思いだったのだろう。
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