ある呪術師の呪い

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 大昔、その大陸には長らく人が入る事がなかった。  あまりにも情報が少なく、予測不能な危険が潜んでいる可能性があるからだ。豊かな資源が見つかるかもしれないのだが、西洋の人々は悔しそうに眺めているしかなかったそうだ。  実際は深い自然と様々な動物たち、豊かな文化に恵まれた大きな大きな大陸だ。  ある場所には広大な湿地帯が広がり、雨季と寒気で雨量に差が出る砂漠地帯もあり、そびえ立つ高山も存在する土地だった。  この大陸は様々な民族が住むが、いずれも文字を持たず、口伝でのみ歴史が伝えられていた。そのせいで、文字を持つ文化の西洋人たちにはなかなか情報が広まらなかったのだ。  湿地帯を見下ろせる小高い丘に、家が一つ立っていた。  ここには一人の呪術師が住んでいた。  呪術師は日が昇って一刻したらようやく家から出てきて、思い切り伸びをする。  背が高くひょろりとしていて、縮れた黒髪を器用に編み上げ、顔にタトゥーをしている。  ギョロリとした鋭い目で湿地帯を眺めると、 「今日も異常はなし」 と呟いてのそのそと家の中に入っていった。
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