平成元年十二月十六日

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蝶子ママに東北書店によく連れて行ってもらった。 「小論文?」 「そう」 参考書を何冊か棚から取ってくれた。 「無理だよ。中学校全然行ってないんだよ。高校なんて行ける訳ないよ。それに私、読み書きが苦手だもの。簡単な計算問題すら出来ないんだよ」 「女子大学の付属高校があるじゃない。今からでも間に合うわ」 うすい通りは華やかなクリスマスのイルミネーション一色に染まっていた。 クリスマスまであと九日。 藍色に染まりはじめた空を見上げると、一番星がキラキラと瞬いていた。 中学校に電話をすると、たらい回しにされて、担任だという男性教諭に繋がるまで三分以上待たされた。 「えぇ~~高校行くの?聞いてないよ」 開口一番。予想した通り迷惑そうな声が返ってきた。 「私、付属高校に行きたいです」 「親御さんからは就職させるって聞いてるけど」 「自分の進路くらい自分で決められます。内申書もなにも書かなくていいです。どうせ書くことないでしょう。イジメで不登校になったって正直に書かないでしょう。どうせまた嘘付くでしょう」 一方的に電話を切った。言いたいことが言えてスッキリした。 「よく言えたわね。偉いわね」 蝶子ママが頭をぐりぐりと撫でてくれた。 「ありがとう蝶子ママ」 「さぁーて、何か甘いもの食べて帰ろう」 「はい」 デートらしく腕を組んで蝶子ママ行き付けのうすいデパートのなかにある喫茶店へと向かった。
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