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「!!!」
全身に衝撃が走る。目には涙がにじんでくるのを感じた。
「あの……大丈夫ですか?」
彼が控えめに、それでいて心配そうに聞いてくる。
「あーうん……大丈夫だいじょうぶ……」
痛みを感じるような気もするけれど、もはやどこが痛いのかもよくわからないから、とりあえず腰を押さえておく。
痛みが少しずつひいていき、頭の中で状況を整理できるようになってきた。前かがみになりすぎて、足を滑らせてしまったらしい。カメラに気を取られすぎて足下に意識をやるのを忘れていた。
ん?カメラ?
「ねえ、カメラは?私のカメラは無事なのよね?」
私はあわてて尋ねた。
彼が返してくれたカメラを確認する。傷一つ無い。データも……無事だった。
降りるつもりが落ちてしまったのは予想外だったけど、カメラは無事だった。
だからこれは、概ね計画通りなのだ。などと心の中で自分に言い聞かせた。
そして、ああそうだ、カメラの恩人に御礼を言わなければ。そう我に返って御礼をいう。
「ありがとう少年」
木から降りる前--正確には落ちる前だけど--の設定を思い出し、にやっと表情も作ってみせる。普段から、好奇心に負けて木にも登るような人間に見えるだろうか。
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