12769人が本棚に入れています
本棚に追加
「あなたは本当に感じやすい。身体つきだけでなく、中身まで厭らしい」
低く抑揚のない声で囁かれ、自分がどうしようもなく卑しい女に思えた。
感じすぎないように気を逸らそうとしても、彼の指の動きひとつで現実に引き戻されてしまう。その巧みさに少しも悋気がないかと問われれば嘘になる。
光沢のあるシルクのシーツに身を横たえると、全身を包み込む心地よさに沈んでしまいたくなった。朝早くから引っ越し作業でバタバタしていたから、自覚しているよりも疲れていたのかもしれない。
いっそ、朝まで泥のように眠ってしまえたら──ふと過ぎった願いを彼が知るはずもなく、冷たい目で見下ろされながら衣服を剥ぎ取られた。
彼がワイシャツを脱ぎ捨てた瞬間に現れた、程よく筋肉がつき均整の取れた裸体。彫刻のような美しさに目を奪われる暇もなく、当たり前のようにわたしのそこを弄ってくる。無表情に似合わない、優しく繊細な手つきで。
「この身体で、どれだけの男をだめにしてきたの?相当咥え込んだんだろう、ここに」
「そんなこと……言わないで、ください」
睦言とは程遠いセリフに、涙がじわりと浮かんだ。従順に開かれていく身体に心がついていかない。あの夜と同じだ。
「酷くしてもいいと言ったのは茉以子だよ」
涙を親指で拭われ、荒々しく口づけられる。息ができないと逃げようとするわたしを言葉で突き刺し、ふるふると震える胸の頂を力強く吸い上げた。
「あ、あぁ……っ、貴介、さ」
「俺と結婚している間は、他の男を受け入れることは許さない」
「そんな、の……あたりまえ……あ、ぃやぁ……っ」
急に押し拡げられたそこに宛てがわれた質量は、紛れもなく彼のものだ。憶えている。二ヶ月前、初めて彼を受け入れたあの夜を。言葉もなく暴かれ、ただ彼と身体を重ねた甘心と快感に打ち震えて乱された夜を。
「指だけでこんなに濡らして、いとも簡単に受け入れてしまうなんて──やっぱり、茉以子は厭らしい」
最奥を撃つように穿たれ、背中が弓形にしなった。甲高い悲鳴をキスで掬い上げ、「いくらでも啼けばいい。俺しか聞いていないんだから」とわたしの身体を掻き抱く。
最初のコメントを投稿しよう!