初夜

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「あなたは本当に感じやすい。身体つきだけでなく、中身まで厭らしい」  低く抑揚のない声で囁かれ、自分がどうしようもなく卑しい女に思えた。  感じすぎないように気を逸らそうとしても、彼の指の動きひとつで現実に引き戻されてしまう。その巧みさに少しも悋気がないかと問われれば嘘になる。  光沢のあるシルクのシーツに身を横たえると、全身を包み込む心地よさに沈んでしまいたくなった。朝早くから引っ越し作業でバタバタしていたから、自覚しているよりも疲れていたのかもしれない。  いっそ、朝まで泥のように眠ってしまえたら──ふと過ぎった願いを彼が知るはずもなく、冷たい目で見下ろされながら衣服を剥ぎ取られた。  彼がワイシャツを脱ぎ捨てた瞬間に現れた、程よく筋肉がつき均整の取れた裸体。彫刻のような美しさに目を奪われる暇もなく、当たり前のようにわたしのそこを(まさぐ)ってくる。無表情に似合わない、優しく繊細な手つきで。 「この身体で、どれだけの男をだめにしてきたの?相当咥え込んだんだろう、ここに」 「そんなこと……言わないで、ください」  睦言とは程遠いセリフに、涙がじわりと浮かんだ。従順に開かれていく身体に心がついていかない。あの夜と同じだ。 「酷くしてもいいと言ったのは茉以子だよ」  涙を親指で拭われ、荒々しく口づけられる。息ができないと逃げようとするわたしを言葉で突き刺し、ふるふると震える胸の頂を力強く吸い上げた。 「あ、あぁ……っ、貴介、さ」 「俺と結婚している間は、他の男を受け入れることは許さない」 「そんな、の……あたりまえ……あ、ぃやぁ……っ」  急に押し拡げられたそこに宛てがわれた質量は、紛れもなく彼のものだ。憶えている。二ヶ月前、初めて彼を受け入れたあの夜を。言葉もなく暴かれ、ただ彼と身体を重ねた甘心と快感に打ち震えて乱された夜を。 「指だけでこんなに濡らして、いとも簡単に受け入れてしまうなんて──やっぱり、茉以子は厭らしい」  最奥を撃つように穿たれ、背中が弓形にしなった。甲高い悲鳴をキスで掬い上げ、「いくらでも啼けばいい。俺しか聞いていないんだから」とわたしの身体を掻き抱く。
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