殯(もがり)の夜

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 村は緑豊かだった。いや、緑しかなかった。大樹に草花、木々の間を飛ぶ鳥に花々を巡る蝶、カッコウやモズが澄んだ声で鳴いているかと思えば、蝉の声は騒々しい。梢を揺らす風の音を追えば、高い空が眩しかった。人工的なものがあるとすれば散在する家々の屋根の上で回る小さな風車の音ばかり……。3人の額に汗が浮いていた。  小道を下ると清流があって子供たちの声がした。小学生ぐらいだろうか、男子も女子も全裸で遊んでいる。「ヤダ……」と雅が声を上げたが、彼らのつるりとした下半身から眼を逸らすことはなかった。 「田舎なのね」  咲耶は思ったままを言った。 「自然と調和している……、いえ、人間も自然の一部だと思い知らされるわね。みんながこんな暮らしをしていたら、地球の温暖化なって心配する必要がなかったのかもしれない」  月子が優等生らしい話をした。 「私はヤダな。電波が届かないから、ゲームはできないし動画も見られない」  雅がスマホで写真を撮った。
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