Ⅲ 隻眼の従者

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「繰り返しになりますが、ここに貴女が思うような危険はありません。完全に、は無理でしょうが、安心してください」 男の人はわたしがこわがっているとわかったのか、ほんのすこし苦笑して、近くの椅子を引いた。 「危険はない、というより。貴女を傷つける理由が、この場所に集う者たちにはないんですよ」 男の人から発せられる、ふしぎな言葉。 わたしにはその言葉の意味がわからなくて。 でもどういうことか、聞く勇気はもてなかったから、ちいさく首をかしげる。 「……まあ、急にこんなこと言われても理解できないですよね」 男の人はわたしと目を合わせるように椅子に座って、まずは名乗らせてください、と笑みを浮かべた。 「私はこの屋敷の主人、シアン様の従者をしております。…リヒト、と呼んでください」 「こう見えて、この身も常の理から外れていまして。──貴女にも馴染みのある言葉で言えば、異端。……つまり。貴女の同胞、ということになります」 自分のことをリヒトと名乗った、目の前の人は。 アーモンド型の瞳をいたずらっぽく細めて、そう言った。
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