Ⅳ 秋風と林檎

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 Ⅳ 秋風と林檎

──わたしとおなじ、異端。そして、わたしの同胞、という存在であると。 目の前にいる月色の目の人、リヒト…さまは、自分をそうだと教えてくれた。 「………っ、ぁ、…、……」 でも。 聞きなれているはずの“異端”という言葉と、リヒトさまは、どうしても結びつかない。 リヒトさまは、とてもきれいなお顔をしていて、言葉も上手で、…なにより、ちゃんと人の姿をしている。 異端、というのは。 わたしみたいに、翼があったり、ぶきみな姿をしているもの、が、そういわれるはずで。 はくり、はくり。 勝手にふるえる唇からは、かすれた息ばかりでていく。 なにかを言おうとしているのか、きこうとしているのか、自分でも、なんにもわからないのに。 「………。まあ、信じられない気持ちはわかります。でもこればかりは自分で見て知って、理解しないとどうしようもない」 リヒトさまは少しの間、わたしのことを観察するように、じっと見てから。 ふっと表情をゆるめ、おだやかな声でそう言って、ギッと、小さく椅子を鳴らした。      
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