13人が本棚に入れています
本棚に追加
Ⅳ 秋風と林檎
──わたしとおなじ、異端。そして、わたしの同胞、という存在であると。
目の前にいる月色の目の人、リヒト…さまは、自分をそうだと教えてくれた。
「………っ、ぁ、…、……」
でも。
聞きなれているはずの“異端”という言葉と、リヒトさまは、どうしても結びつかない。
リヒトさまは、とてもきれいなお顔をしていて、言葉も上手で、…なにより、ちゃんと人の姿をしている。
異端、というのは。
わたしみたいに、翼があったり、ぶきみな姿をしているもの、が、そういわれるはずで。
はくり、はくり。
勝手にふるえる唇からは、かすれた息ばかりでていく。
なにかを言おうとしているのか、きこうとしているのか、自分でも、なんにもわからないのに。
「………。まあ、信じられない気持ちはわかります。でもこればかりは自分で見て知って、理解しないとどうしようもない」
リヒトさまは少しの間、わたしのことを観察するように、じっと見てから。
ふっと表情をゆるめ、おだやかな声でそう言って、ギッと、小さく椅子を鳴らした。
最初のコメントを投稿しよう!