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「本当なら貴女の置かれている状態、この屋敷の説明、それから……異端に関する知識の確認もしたいところですが。目覚めたばかりですし、少し時間を置きましょう」
近くにある机にのばされた、黒い手袋につつまれている、リヒトさまの手。
その長い指が、とうめいなビンのようなものを持つ。
太陽のひかりにキラキラかがやく入れものと、中に入った、むこう側がみえるくらいきれいなお水。
前いた場所で出されるのはいつだって、砂やホコリがはいっていて、器もカビはじめていた。
でも、それとはぜんぜんちがうものが、ふたつのカップをみたしていく。
「…さて。目覚めたばかりで喉が傷んでいるでしょう。まずは一緒に、お茶にしませんか?」
そう言われてはじめて、喉がカラカラに渇いていることに気がついた。
リヒトさまは一瞬、カップを持った手をわたしのほうに向けたけど。
すこし考えるように動きをとめて、「身体は起こせますか?」と聞いてから。
カップはわたしのいる場所のとなり、ちいさな机の上に置かれた。
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