Ⅰ 鳥籠の世界

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「──っ、…はひゅっ、けほっ…けほっ、…」 むりやり飲み込んだ息が胸のあたりであばれて、咳がでる。 くらくら、じくじく。 あちこちが痛くて、体を小さくして耐えるけど、なんでか目の前がゆっくり暗くなってきた。 ねむったら、こわいこと、されるかもしれないのに。 また、足を切られて、いっぱい血が出るかも。 知らないひとに籠から出されて、髪を切られたり、なぐられたり、羽根をむしられるかもしれないのに。 どうしても、起きあがって、きちんとお座りしていることができない。 咳きこんで苦しい胸が、ぎゅうっと締めつけられているみたい。 喉のおくに、なんでか血のにおいがする。 それをわたしは、夢のなかにいるみたいにぼんやり感じながら、真っ暗な籠のそとを見ていた。 ──カツン、カツン。 誰かが、“出来損ない”の鳥籠がならぶここに、こようとしていたから。
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