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「……ったく。さっきの音はなんだ、また仕入れたばっかの奴隷が脱走でも企てたか? ええ?」
「いや、先日も躾られたばかりだ。うちの加虐趣味に拷問紛いの折檻を受けて、短期間で懲りずに脱走するような奴はおらんだろ」
「…はっ、違いない。そもここの奴隷どもに脱走なんて気力、残ってないか」
カツン、コツ、カツン。
暗い、籠の向こう側がぼんやり明るくなってくる。
ふたりぶんの声と影がたよりないあかりの中に浮かびあがって、わたしの、わたしたちのいる籠の方へやってきた。
「さぁて、さっきのはどいつだー?」
「同じ檻の中のもんが妙な動きをしていたなら、庇おうと思うなよ。差し出せ。ここじゃ仲間意識は命取りだって、お前らもわかってるだろう?」
ゆらゆら、あかりの中の影は揺れて、おおきくなったり、長く伸びたり。
見えはじめた姿は人なのに、まるで別のなにかみたいだ。
籠の向こうにはいくつもの籠が浮かびあがって、そのなかで子供が、大人たちが、みんなこわがって息をひそめている。
そのひとつひとつをのぞき込み、たまになかに手を入れて、奴隷と呼ばれる女の子が髪を引かれたりしつつ、二人は少しずつこっちにやってくる。
そして、
あかりを持った男の人たちは、わたしの籠の前で足を止めた。
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