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「おい、こいつだ。さっきの音の原因はこれが倒れた音だな」
「あ? ……あー、こりゃ、駄目だな」
男の人たちはわたしの籠の前で足を止めると、ガチャンと重い音をたてて、扉を開けた。
わたしに伸ばされた大きな手が頭に触れて、いたくてひゅっと息がつまる。
それから、むりに体の下で曲がってる翼が掴まれ、強引に体の向きが変えられて、二人はわたしをまじまじと覗きこんだ。
「……うわ。足の傷、化膿してるな」
「頭からも出血がある。…っ糞、気味が悪い双翼のせいで売れ残ってる“異端”のくせに、面倒なことしやがって!」
わたしの頭に腫れていた男の人の声に怒りがまざった、すぐあと。
がづん、と、頭の中までゆさぶられるような衝撃が走って、わたしは籠の奥に体を打ちつけた。
「ゲ、ホッ! い、っ……──…」
ぐわーん、耳鳴りがして、まわりの音が遠くなって、体が、うまく動かない。
まるで水の中にいるみたいに、目の前もぼやぼやと見えづらくなっていく。
それなのに、殴られたらしい頬が火をあてられたみたいにあつくて、あつくて、気を失うこともできない。
あえぐように浅く息をして、体を丸める。
ふいにじゅくじゅくと腫れぼったくなった足の傷がゴツ、と籠の鉄格子にあたって、痛みよりはやく、びくびくと体が勝手に跳ねた。
「仕方ねぇ。次の“競り”で最低額で売っ払おうと思ってたが、これはもう売りんにならねぇぞ」
「わかってる。……あーあ。面倒臭いが、処分だな」
……しょぶん。
処分、って、なんだろう。
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