Ⅰ 鳥籠の世界

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「おい、こいつだ。さっきの音の原因はこれが倒れた音だな」 「あ? ……あー、こりゃ、駄目だな」 男の人たちはわたしの籠の前で足を止めると、ガチャンと重い音をたてて、扉を開けた。 わたしに伸ばされた大きな手が頭に触れて、いたくてひゅっと息がつまる。 それから、むりに体の下で曲がってる翼が掴まれ、強引に体の向きが変えられて、二人はわたしをまじまじと覗きこんだ。 「……うわ。足の傷、化膿してるな」 「頭からも出血がある。…っ糞、気味が悪い双翼のせいで売れ残ってる“異端”のくせに、面倒なことしやがって!」 わたしの頭に腫れていた男の人の声に怒りがまざった、すぐあと。 がづん、と、頭の中までゆさぶられるような衝撃が走って、わたしは籠の奥に体を打ちつけた。 「ゲ、ホッ! い、っ……──…」 ぐわーん、耳鳴りがして、まわりの音が遠くなって、体が、うまく動かない。 まるで水の中にいるみたいに、目の前もぼやぼやと見えづらくなっていく。 それなのに、殴られたらしい頬が火をあてられたみたいにあつくて、あつくて、気を失うこともできない。 あえぐように浅く息をして、体を丸める。 ふいにじゅくじゅくと腫れぼったくなった足の傷がゴツ、と籠の鉄格子にあたって、痛みよりはやく、びくびくと体が勝手に跳ねた。 「仕方ねぇ。次の“競り”で最低額で売っ払おうと思ってたが、これはもう売りんにならねぇぞ」 「わかってる。……あーあ。面倒臭いが、処分だな」 ……しょぶん。 処分、って、なんだろう。
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