13人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
やがて、ギシリとわたしの寝ている場所がきしんで、だれかの重さがなくなるように揺れた。
するり、と。
頭を撫でていた手が離れていって、ふわりと空気が揺れる。
「俺は一度ルイの小屋に行く。二時間したら、リヒト。お前も他の者と交代しろ」
「はい、シアン様。この場はお任せください」
しずかな受け答えと、コツ、コツ、遠ざかっていくだれかの足音。
ゆめうつつの鼻先をかすめたのは、なんだかあまくて、いつか、遠い日に知った日差しと花の匂いにも似ていた。
……けど。そこまでが、限界で。
閉ざしたまぶたの端から、じわじわと暗さが増してくるようで、なにも考えられなくなってくる。
ふあふあ、とろとろ、浅い水の中にいるような、ゆっくりとした眠りへのいざない。
──パタン。
最後に聞いたのは、少し離れた場所で鳴った、扉の閉まる音で。
それをさいごに、わたしの意識も、波のような眠りにゆっくりとさらわれていった。
最初のコメントを投稿しよう!