Ⅱ あまい残り香

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やがて、ギシリとわたしの寝ている場所がきしんで、だれかの重さがなくなるように揺れた。 するり、と。 頭を撫でていた手が離れていって、ふわりと空気が揺れる。 「俺は一度ルイの小屋に行く。二時間したら、リヒト。お前も他の者と交代しろ」 「はい、シアン様。この場はお任せください」 しずかな受け答えと、コツ、コツ、遠ざかっていくだれかの足音。 ゆめうつつの鼻先をかすめたのは、なんだかあまくて、いつか、遠い日に知った日差しと花の匂いにも似ていた。 ……けど。そこまでが、限界で。 閉ざしたまぶたの端から、じわじわと暗さが増してくるようで、なにも考えられなくなってくる。 ふあふあ、とろとろ、浅い水の中にいるような、ゆっくりとした眠りへのいざない。 ──パタン。 最後に聞いたのは、少し離れた場所で鳴った、扉の閉まる音で。 それをさいごに、わたしの意識も、波のような眠りにゆっくりとさらわれていった。
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