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千夏
『1番線電車まもなく発車いたします。ご乗車の方は~』
数人の乗客が電車に乗りこむのを、千夏はぼんやりと眺めていた。
「いいなぁ…」
ゆっくりと動き出す列車を、通勤用のトートバックを握りしめて見送る。
自転車通勤の千夏は本来ならこの駅に用などないのだが、いつからか仕事の後に30分だけ、改札のないこのホームで休憩してから帰宅するのが日課となっていた。
ホームのすぐ横には海が広がっており、それを眺めるのもまたつかの間の癒しだ。
ピンポーン ピンポーン
急に特徴的な機会音がホームに響く。
「え?なに?」
また電車が来るのだろうか?
しかし小さな駅に停車するのは、定期列車が1時間に1本のみ。
先ほど見送ったばかりなので、しばらく列車の往来は無いハズだ。
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