千夏

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千夏(ちなつ)が線路に近づいて耳を澄ますと同時に、1番線へクリーム色の塊が滑り込んできた。 「え?なにこの電車!?」 プシュー 列車のドアが大きな音を立てて開く。 初めて見る1両編成のレトロな列車だ。 「お待たせいたしました。潮時列車(しおどきれっしゃ)でございます」 「しおどき…列車?」 運転席の窓から女性車掌が顔を覗かせる。 ポカンとしている千夏(ちなつ)と目が合うと、探し物が見つかったかのような明るい笑顔になってこちらへ手招きした。 「お客様、どうぞご乗車ください」 「え?いや、私は…」 戸惑う千夏(ちなつ)は持っていたトートバックを再び握りしめた。 「まあまあ。たまには息抜きじゃよ」 運転席の窓から、今度は大きなトラ猫がひょこっと姿を現した。 そして何故か喋った。 ギョッとする千夏(ちなつ)だが、すぐに納得顔になる。 「…ああ、そうなのね」 「ん?何がじゃ?」
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