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「あれって…」
千夏は車窓に駆け寄ると、へばりつくように両手を当てて少女に見入る。
「...私だ」
その後ろから、まだ幼い弟がヨチヨチ歩きで一生懸命追いかけてきた。
「あ!」
弟が派手に転ぶ。
号泣してその場でジタバタしている彼を、幼い千夏が抱き起こした。
「大丈夫?そんなに泣かないんだよ」
純真無垢な千夏の声が車内に響く。
「泣いてもまた起き上がったらいいんだよ。まだヨチヨチ歩きだけどさ、これから色んなことが出来るようにるよ。そしたら何でも楽しくなるよ」
千夏の目からは涙が溢れる。
「...あの日の自分が言ったように、これから色んなことができるようになれたら...良いな」
そしてさっと潮夏に向き直ると、照れ臭そうに涙を拭ってみせた。
「千夏様。ひまわりは太陽に向かって咲きますね」
「うん」
「どうか貴方様も、上を向いて歩まれますように」
深々と一礼する潮夏の言葉に、千夏は少女のように可愛らしく笑った。
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