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尊は、今日も帰れば家で出迎えてくれるであろう母が無性に恋しくなった。
「まもなく到着いたします」
運転席の男性の渋い声にハッとすると、列車はもとの駅に帰ってきたらしい。
レトロな車体は、静止すると同時に大きな音を立ててドアを開いた。
「お客様。どうかお母様のおっしゃるように」
ホームに降りた尊に、潮夏はまた深く一礼した。
「ありがとうございます。車掌さん、俺…」
いつの間にか潮夏の足元にくっついていたトラ猫も彼女と共に尊を見つめる。
「あと1か月、受験勉強頑張る。早くサッカーやりたいから!」
「良い進路じゃ。自分に正直にの」
爽やかに笑った尊は、去っていく列車に元気よく手を振り続けた。
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