2人が本棚に入れています
本棚に追加
5
初めての車。今まで乗ったことがない。しかも初めての車が外車とは思っていなかった。
「のえるちゃん、大丈夫?」
初めてすぎて酔ってしまった。皆が酔っていなかったから酔わないのが普通なんだと思う。最初はとっても景色が綺麗だった。一瞬で過ぎていく景色はたまらなかった。けれどそんな思いは最初だけだった。5分もするとだんだん気持ち悪くなってきて、しまいには意識が遠のいてしまった…ということみたい。
「行くぞ。」
「ちょっと、待ってよ」
聡志さんと希美さんで喧嘩が起こりそうな雰囲気。私はどうしたらいいか困ってしまった。
「大丈夫だよ、心配しなくても。ゆっくりしてて」
和尊さんに言われてしまう。もしかして心の中が読めるのだろうか。なんだか和尊さんの言葉になんだか落ち着いていた。ほっとするようなそんなかんじだ。
「…ほら、大丈夫でしょう」
和尊さんに言われて二人の方を見ると、そこにもう聡志さんはいなかった。先に言ってしまったらしい。
「引き止めなくてよかったのですか?」
「聡志なんていいわよ。」
希美さんはまだ怒っている。ずっと仲が悪いのかもしれない。私のせいで今日、無理に付き合わせてしまったのかも。そう思うとなんだか申し訳なくなる。
「いつもこんなかんじだから。聡志も気が済んだら戻ってくるよ。」
こっそり和尊さんが教えてくれた。やっぱり和尊さんは優しい印象を受ける。
「行きましょう。そういえばのえるちゃん、ワオンショッピングモールってきたことあった?」
「いえ、一度もないです。」
買い物なんて近所の商店街でうろちょろしているくらいしかない。ワオンなんて値段の高いところには来た事がない。他のお店に比べると品揃えはいいらしいが、私が買えるような値段の商品はない。
「軽く説明するよ。ワオンとは、1926年の……」
とても説明が長かった。真剣に話しているから私も真剣に聞いていたけれど、いつのまにか希美さんまでいなくなっていた。そして時計を見たら、30分近く経っていた。おかげでよくワオンのことついてわかった。
「あ……希美達探そうか。」
「ちょっと、いつまで話してたの?っていうかのえるちゃんもよくこんな奴に付き合えたね。」
走ったからとても疲れた。4階建ての建物をぐるぐる走って、やっと見つけた。希美さんだけかと思っていたら聡志さんもいた。そして悟志さんは重そうな荷物をたくさん持っている。今にも落としてしまいそうだ。
「案外面白かったです。そして悟志さん、大丈夫ですか?」
「面白かったならいいけど……。ほんとに面白かった?」
「はい。例えば……」
聞かれたから答えようとしたらなんだか呆れられた。どうしてだろう。和尊さんほど時間がかかる訳ではないのだけれど。
「服、探しにいこっか。」
最初のコメントを投稿しよう!