親友

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「違うの? 」 「違うよ」 「でも、先生たちから甲斐田さんの手紙にあずみのことが書いてあったって言われたわよ」 「なにそれ」  瞬間考えたのは彼女から私への恨みの文面だった。自覚はないが、彼女から見れば何か嫌なことをしてしまったのかもしれない。中学の同級生だというのに私のたちの関わりはあまりにも薄かった。それを恨まれても仕方がない気がする。しかし、それならば「親友」なんて言葉を遣うだろうか。 視線を外して考え込む。母さんもその表情を見てわかったのだろう 「私も、まさかあずみに限って何もしてないはずって思ったんだけど、書いてあったことは感謝だったらしいから、心配しなくていいよ。明日の朝、校長室に来てほしいんだって」 「……わかった」  もしかして私に何か伝えたいことを書き留めたのかもしれない。だとしたら私の文面で彼女が死んだ理由が分かるかもしれない。布団にもぐった後で、そんなことを考えた。  もし、この件が殺人だとしたら、大きなニュースになってしまうだろう。昼間の情報番組が大きなフリップをめくりながら、教育評論家や大学教授が神妙な面持ちで意見を述べる。スタジオの芸人や俳優が懸命に頷きながら事前に用意されたコメントを、さも自分の考えかのように述べる。そんな光景が容易に想像ついた。  私たちは小さいころから定期的にこんなニュースを目の当たりにしていて、そのたびに最近の若者の精神は狂っているだの、子どものころからよくない情報に触れているからだの、教師の質が落ちて学校全体がおかしくなっているだの、言いたい放題聞かされてきた。 そんなことを言われてもおかしいのは私たちの一部の人だけだし、その原因をどこかに求められても困ってしまう。  明日、甲斐田さんからの手紙を読んだら、私が一番彼女の死に近づく存在になれるのか。そうすれば私はクラスの中心人物になれるな、なんて考えて、自分の心の中にいた野次馬の存在に気が付いた。心臓がドキドキする。一体どんなことが書いてあるのか、楽しみなのだ。興奮している。私もやっぱり異常者だなと乾いた笑いをこぼし、何とか目をつぶって眠った。
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