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『親友の高橋あずみちゃんへ
あなたは私の憧れでした。これからもあずみちゃんのことずっと応援しています。もしも生まれ変わったら、また親友になってくれると嬉しいです。さようなら』
これだけだった。しかし、これは立派な遺書だった。
自分の死を覚悟した、これから確実に死ぬことを望む人間が書いた文。
来世なんてありもしない、あったとしても巡り合える確証もない奇跡に期待する無駄な思考。これだけを読むと彼女は自ら死を望んだように見えるのだが、そうなると報道とは異なる。どういうことか。
黙って読んだ後も私はどうすればいいのか分からなくて、じっと遺書を見つめていた。
初めて見る彼女の文字。女子高生らしく、少し崩れた可愛らしい丸っこい字だ。
「読んでもらったけど、最近の甲斐田さんの様子はどうだったかな? 何か気になることとかなかった? 」
黙って首を振る。そんなことを聞かれても、普段の彼女を知らない。違ったかも、同じだったかも私にはわからない。
「そっか。じゃあ、このお手紙読んでどうだった? 甲斐田さんが書いたものだろうということはわかってるんだけど、なにか高橋さんにしかわからないこととか書いてないかな? 」
暗号とかか? と思ったけどこれにも同じ反応をする。
「あの……」
「何かな」
「彼女は自殺なんですか?」
間瀬さんは、聞かれると思っていたのだろう。ゆっくり瞬きをして
「それはまだ調査中なの」
とだけ言った。
「でも、これ遺書ですよね。遺書があるってことは自殺じゃないんですか?」
「……遺書があるからって100%自殺かどうかは分からないのよ」
悲しそうな声だった。
「警察は、怪しいことがあれば調べるものなの」
「……私のこと疑ってるんですか?」
「まさか」
間瀬さんはコピーした遺書を折りたたみながら笑った。
「甲斐田さんが親友っていうんだからあなたは違うと思っているわ。まあ、急なことで高橋さんもショックだと思うけど、心を強く持ってね。何か思い出したらいつでも連絡して」
と名刺を渡してくれた。
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