遺書

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 そこにいた校長先生も宮内先生も一言も発することはなかった。私になんと声をかけていいのかわからなかったのだろう。私自身もなんて声をかけてもらえばいいのか分からない。ただ、違うのは、「私がショックを受けているだろうから気を遣わないといけない」という大人の勝手な私への評価だ。ありがとうございます、とだけ言って名刺を受け取り、私は校長室を出た。  校長室を出ると、鳴り響く電話の音が聞こえた。先生たちもクラスのこともあるのに大変だなあと思う。時計を見るともう一時間目が始まりそうな時間だった。どうせ遅れてしまうのなら、ゆっくり行こうと歩みを遅くした。すると向こうから人影が近づいてくるのが見えた。
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