親友

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 テレビを見てだらだらしていた。まだ、夕方のニュースにはなっていないようで、どこのテレビ局も最近の政治事情や、新しく開店した飲食店の紹介など、いつもと変わらないニュースが流れていた。ひょっとしたらニュースになっているかなと思っていたけれど、全国ニュースにはその片鱗もない。高校生の自殺なんて珍しい時代ではないのだろうか。あ、いや、そもそも自殺かどうか決まっていないのか。これが事件だったらニュースになるんだろうな、と昔のニュースを思い出す。 頭のどこかでニュースになって自分の学校がテレビに映ることを期待している自分がいることに気が付いた。ああ、いやだいやだと頭を振って考えを消す。 だからと言って、バラエティー番組を見る気にはなれなくて、チャンネルを変えていたら、母さんに早めに寝なさいと言われてしまった。時間はまだ八時だ。だからといってやることもないのでスマホを持ち込んで布団に入る。音楽でも聞くかと、布団の中でスマホをいじっていると、ピコンという通知音がした。二年一組の学級ラインだ。 『明日、学校休みらしいよ! ホームページに載ってた』 学級委員の本郷さんからだった。彼女は一年生のころから学級委員を進んでやる積極的正義感女子だ。強すぎる正義感で中学のころはきっと苦労したのだろうなと思うが、進学校に入ってしまえば周りはみんな基本的に真面目で勉強のできる生徒ばかりだ。中学の頃はなじめなかった生徒も本当の自分を発揮できる。というのがこの学校の売りだった。そのおかげでここら辺では一番人気の学校だ。  たくさん勉強して中学でも内申点を取らないといけない学校だ。私の中学から進学したのは私と甲斐田さんだけ。入学できたら家族も親戚も喜んでくれて、自慢の子どもになれるのに、どうして彼女は死んでしまったのだろう。 『やった! ゲームしまくろう! 』 井上くんは相変わらずだった。ここまでくるとその無神経さがすごいとさえ思ってしまう。 「あずみ」 母さんが話しかけてきた。ひょっこり布団から顔だけ出す。 「今、学校からメール来たけど、明日休みらしいよ」 「知ってる。さっき、クラスのラインでも来た」 「そう、お昼には説明会があるみたいだから行ってくるね。あずみは留守番しておいて」 「わかった」 「おやすみ」 その言葉には返事をしないで再び布団の中にもぐりこみ、スマホを見る。ラインの画面を見ると先ほどよりも会話が進んでいた。
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