ノートパソコン

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『今どこにいるの?』  夜中になっても帰ってこない姉の愛理(あいり)にメールを送る舞理(まいり)。  愛理とは仲がいいわけではない。親に頼まれたから送ったのだ。  携帯が振動しメールがきたことを告げる。見ると愛理からだ。 『樹海』  短い二文字から舞理は愛理が何をしようとしたのか察したが、一応確認する。 『もしかしてだけど、死のうとしてる?』  今度はすぐに返信が来た。 『どうだと思う?そうだったら邪魔されたくないし言うと思う?』  そう言われると確かにそれもあるかもしれかいが、それ以外に樹海になんの用があるのだろうか。  舞理は愛理からもらったノートパソコンのことを聞く。  一昨日、隣の部屋で断捨離をしていた愛理を見かけ、いらないものの中にまだ使えるノートパソコンがあったので舞理はそれをもらうことにした。  画像などは消されていたがメールのアプリだけ一つ残っていたが、舞理はパソコンでメールはしないので興味がなく無視していた。  そのアプリに今日の昼間、一件メールがきていた。  無視しようとしたがふとした興味本位でそのメールを覗く。 『大手出版社からだったよ。なんかお姉ちゃんの送った漫画、読み切りとしてだけど載せたいとかなんとかって』  愛理が漫画好きなのは知っていたがまさか出版社に出してるとは知らなかった。  しかもメールを読むとそれが雑誌に載るというのだから驚きだ。  まさかだめだったと決めつけて、諦めて、死のうとでもしたのだろうか。  しばらく経って愛理からきたメールには舞理が嘘ついてるんじゃないかと書いてあった。  だが舞理にはそんな嘘をつく理由がない、いやこのタイミングならあるのかもしれないが、樹海という返信が来ても来なくても言うつもりだった。 『良いの?返信しなくて?せっかくの話なのに』  証拠に出版社からのメール画面の写真をつけてメールを送る。  眠気に襲われてきたので最後に『死のうとしてるのかしらないけど、別に今すぐじゃなくてもいつかは死ぬんだし。それにお姉ちゃんの漫画、雑誌に載ったら自慢出来るから帰ってきて返信してね』と送り眠りについた。  次の日早朝、物音がして目を覚ますと愛理がノートパソコンとにらめっこしていた。  驚いて小さな悲鳴を上げるとドアの鍵がかかってなかったと指摘される。  パソコンと携帯を交互に見ていた愛理はよしと小さく言い部屋を出ていく。  画面を見るとアプリは消されていた。  その後、舞理はメールで見た雑誌を見ていると見覚えのあるタイトルがあった。 「ねぇ、これってお姉ちゃんが描いたやつ?」  そう聞くと愛理は少し口角を上げ「さぁ?」と言う。
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