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突然だけど、
アクアリウムコーディネーターという業者がある事を御存知だろうか?
水槽メンテナンスと水槽設置管理はもちろんの事、
熱帯魚、海水魚、水草水槽がメインだけど、クラゲ水槽、淡水魚水槽、大型の古代魚水槽をご要望に合わせて設置し、
最近ではビオトーブ、テラリュウム、コケリュウム等も扱っている。
水槽リース業者とも言われ、
魚は好きだけどメンテナンスが分からない。
水槽を一から集めるのは大変。
手間は掛けたくないけど、癒やしの為に置きたい。
そんな気持ちを持つお客様が対象であり、
主に、企業・オフィスの経営者、開業医、介護施設、幼稚園、飲食店の店長、個人の住宅リビング、生き物が好きな個人やご家族、結婚式を控えた新郎新婦、撮影、イベントのスタッフ等であり、水槽には色んな活用方法がある。
例えば、事務所•オフィスでは、
熱帯魚や観賞魚の展示、空間演出装置として活用される場合が多く、
ミーティングルームや食堂の集まるスペースに、場を和ませるインテリアとして置かれることや
病院やクリニックでは、受付や待合室に設置されることが多く、空気を和やかにするインテリアとして人気。
かわいい熱帯魚や美しい水景が、患者様の緊張感を緩和し、院内を明るく清潔な雰囲気に仕立ててくれるからこそ、
病院とかに行くと何気無く置いてあるのは、水槽リース業者が関わってたりする。
私は、小さい頃から魚が好きで、
歯医者に行った際に水槽には水草もなく、
小さなよれた魚が一匹だけ入った苔が生えた水槽を見て、こういった寂しい水槽が綺麗になって、もっと人の目に止まればいいのに…
そう思って、高校卒業後に求人募集をしてた為に入社した。
その後、研修と知識を学んでからその歯医者さんに話して、無償で水槽を綺麗にさせて貰ってから、私を呼んでくれる人達が口コミで徐々に増えてくれた。
いつしか、大きな企業や病院のオフィス、受付、社長室、個人の家なども担当する事になり、この仕事を誇りを持って楽しみながら行っていた。
「 魚沼、御前が設置した製薬会社の社長が、魚の体調が悪そうだからって見に来て欲しいらしい 」
「 分かりました。すぐにお伺いするとお伝え下さい 」
「 頼むなー 」
株式会社アクアの社員として働いてるのだけど、スタッフにも其々に得意な分野がある為に、お客様のご要望に合わせて、それに合ったスタッフが出向く。
向こうから直接、スタッフをお願いする場合はあるけど、
今回…魚の体調不良を伝えてきた大手製薬会社の社長は、
3年前に日本支部のビルを新しく建てて移動した事で、自分の社長室にデカイ水槽を置いてくれって内容で言ってきた。
そのデカイ水槽が、淡水魚水槽であり古代魚だった為に、私の担当としてやったのが始まり。
気に入ってくれたみたいだし、それからよく些細な変化でも連絡をしてくれるから、こっちからすれば魚の病気が悪化してない状態で診れるのは嬉しいと思う。
大きな鞄に、水槽メンテナンス用と古代魚が病気になっててもいいように、それ相当の薬などを入れ、肩に担いでは立ち上がる。
「 では、行ってきます。大事の時は助っ人お願いします 」
「 魚沼さんなら大丈夫でしょ。行ってらっしゃい 」
「 行ってきます 」
大丈夫と言われても、水替えとかになると
めちゃくちゃ重労働だから、人手は欲しくなるもの、けれどそれ以外なら特に必要が無い為に向かうことにする。
水槽のメンテナンスは月に2回から3回ほどサービスで行っている。
けれど、それ以外の内容なら追加でお金を貰ったりするけど、こっちの責任で病気になった場合などは貰わない。
あくまで、魚もレンタルの一つとして含まれているからね。
魚の絵が壁に描かれた会社を出て、自車に乗り込めば後部座席に鞄を置き、ダッシュボードへと視線をやれば、金魚のぬいぐるみが少しズレてた為にそれを戻してから、エンジンを付け走り出す。
魚、特に淡水魚が好き過ぎてこの車もマスコットとか色々ぶら下がってるんだよね。
後部座席には大きな錦鯉のぬいぐるみとあるし、シーツは魚柄だったりする。
四駆である愛車もラピスラズリ色をしてるぐらいには、魚に埋め尽くされていた。
車を運転するのも好きな為に、ルンルンで向かう。
大きな40階建てに地下2階がある、日本支部の大手製薬会社 貴舩製薬へとやって来た。
最初、新しく社長になって水槽を設置したいとか言い始めたあの人には驚いたな…。
40階迄、3mは超えた大型水槽の設置をお願いしてきたからね。
誰が運ぶんだと悩んだけど、そこはお客様。
言われたからには答えるために頑張った記憶がある。
私が担当した中では、トップクラスの水槽の大きさだから、メンテナンスもちょっと楽しい。
さて、どんな風に魚が体調不良なのか気になりながら入ってすぐにある、受付で中にはいる許可を貰えば、エレベーターで上がる。
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