12<B棟906号室・鈴村麗美Ⅱ>

3/4
前へ
/108ページ
次へ
 麗美は、桜子経由で健輔とも距離を縮めつつ(あくまで三人一緒にご飯を食べたりするくらいだったが)虎視眈々と彼を横取りしようと狙ったのだった。表向きは、二人の仲を応援する良き友人のふりをしながら。付き合えば付き合うほど、健輔の優しさが自分に向いていないことに腸が煮えくり返りそうになる。そしてある日ついに、インターネットの闇サイトで見つけてしまったのだ。  嫌いな相手に、制裁を下す。  それに見合ったお金さえ振り込めば、その相手をリンチすることもレイプすることも山奥に拉致して拷問することさえ可能だと。 ――あんたがいけないのよ、桜子。あんたなんかが、私を出し抜こうとするから。  桜子の恥ずかしい写真をたくさん撮ってほしい。彼女が彼氏と別れたくなるように仕向けてほしい。自分の存在は匂わせないように、お願い。  そんな注文をつけた。恥ずかしい写真、の具体的な内容は言わなかったが、それでも闇組織に繋がっているであろうその闇サイトの内容を思えば、おのずと何が起きるかなど想像もつこうというものである。  かなり手痛い出費ではあったが、そんな金に糸目もつけないと思うほど麗美の鬱憤は溜まっていた。一応は友達だったと思っていたはずの少女が、いっそ死んでくれても構わないと思うくらいには。実のところ健輔と同棲するにあたり、それまでにもバイトをしていたのに手持ちの貯金がほとんど尽きていたのはこのためであったりする。遡って子供の頃に貰ってためていたお年玉の貯金まで、みんな使う羽目になったのだから。  ただし、その分効果は上々だったと言っていい。  それから約一週間後、桜子は三日三晩行方不明になった。そして警察に発見された彼女はまともに口も聴けないような状態になっていたのである。それもそうだろう。唇は刃物で切り裂かれ、顔には手術しても消えない酷い傷跡が残り。性器は切除され、あるいはズタズタで使い物にならない有様になっていたのだから。加えて、下腹部には“売女”というちゃちな刺青まで。レイプされ、拷問され、人間としての尊厳を徹底的に破壊されたのは明白である。実際依頼完了の証として、麗美の元にはいくつもの彼女の“恥ずかしい写真と動画”が送られてきていたのだから疑う余地もないだろう。 『いだいっ……いだいよおおっ……お願い、ゆるして、ゆるじで、ゆるじでええっ!』
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加