13<B棟906号室・鈴村麗美Ⅲ>

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 それでも、最近の見かける頻度は異常だし、何より本能が妙な警鐘を鳴らしているのである。麗美がやったことを、もしその処刑人とやらが嗅ぎつけられたら。いくら麗美に正統性があったところで、自分も処刑の対象にならないとは言い切れないのだから。  そもそも処刑人なんて名乗ること自体が傲慢ではないか。人の罪を死をもって裁くなど、その善悪など、本来一人の存在が独断で決めていいことではないはずだというのに。 ――そんな話したところで。どうせ悪霊なんて信じやしないんでしょうけど。  昔から幽霊は見えるが、祓う方法などまったく知らないのが麗美である。そういう修行を受けたこともないし、大体積極的に関わりたくもないのだ。というか、今までは幽霊が見えることこそあれ、自分が実害を被ったことなど一度もなかった。少しヤバイ気配がする幽霊は、遠目に見えた時点で近づくのをやめるか、あるいは目を合わせないようにするだけで大抵対処可能だったからである。他の人間が取り憑かれようと祟られようと、はっきり言って自分はそんなこと知ったこっちゃないのだから。 「あの」  B棟から管理棟は比較的近い場所にある。自動ドアを開け、受付に向かおうとしたところで足音と声が聞こえてきた。 「何があったのかなあ、浮島さん」  管理棟の一階は、受付の奥に休憩スペースと事務所があるという仕組みである。その事務所の奥の部屋から、二人の男女が話しながら出てくるところだった。心配そうに声を出したのは、先頭を歩いていた茶髪の若い女性だ。名札には遠藤彩加、と書かれている。 「なんか、受付の机の中を覗いてびっくりしたように見えましたけど、別に何もなかったですよね、主任?」 「なかったと思うぞ。何か見間違えたんじゃないのか、それこそゴキブリとか」 「や、やめてくださいよ!ここ出るんですか!?あたし悪霊より駄目なんですけど!?」 「安心しろ、俺も見たことないから。まあいない保障はないけどな、ここボロいし」 「いやあ!」  大袈裟に悲鳴を上げる彼女は、果たして客が受付にいることに気づいているのかどうか。というか、受付には椅子がぽつんと置かれているだけで、誰も座っていないのだがこれが普通なのかどうか。  困惑して佇んでいると、麗美の視線にようやく気づいてか、その遠藤という女性がぱたぱたと駆け寄ってくる。 「あ、あー!ごめんなさい、気づかなくて!」 「い、いえ。その、何かあったんですか?」
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