噓とエッセイ#6『爆弾』

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 なので、私は毎週レンタルビデオ店に通うことにしている。平成一桁生まれとしてはありえないほどの、オールドな慣習だ。実際、この前も借りた円盤をツイッターにアップしたら、「久しぶりに見た」とか言われた。  スーパーで夕食を買うついでにというエクスキューズを得て、私は夜な夜な近所のGEOに自転車を走らせる。やりすぎなほど明るい店内に、アルマゲドンいくつとかよく分からないビデオオリジナル作品。新作旧作人気作。  基本的には地方だから、あまり利用者もなく、観ようと思った作品は大体借りることができる。  先週、借りた映画はたしかこんな映画だった。主人公はある秘密組織のエージェント。心臓に爆弾を埋め込まれていて、毎日連絡をしなければ死んでしまうという突飛な設定だ。  癖の強い役を演じることが多く、ネットでもいじられている俳優が、ニューエネルギーの情報を掴むため、相棒と奮闘する。果たして、主人公は無事に組織に情報を届けられるのか、といった映画だった。  正直、そこまで面白くはなかった。ストーリーも平坦だし、アクションも見ごたえがないし、あと何を言ってるかよく分からない。  だけれど、私は主人公が抱える苦悩が他人事だとは思えなかった。
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