噓とエッセイ#6『爆弾』

3/7

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 だって、私の心臓にも爆弾が仕掛けられているのだから。それは、生まれたときから備わっていて、三〇歳になった瞬間に爆発するように設定されている。  つまり私の命は、あと二年半ほどだ。余命ものの映画なら、いまいち盛り上がらない長すぎる残り時間だ。  これを読んでいるあなたは、私が血眼になってでも爆弾の解除方法を見つけるべきだと、言うかもしれない。  だが、残念なお知らせ。この爆弾の解除方法は現時点で、全く見つかっていない。  赤や青のケーブルも、暗証番号もない。手術をして取り出そうとしても、爆弾は心臓の外側に張りついているため、心臓を傷つけずに切除するなんてことは不可能だ。  私は三〇歳になった瞬間に死ぬ。それは不可避だ。二階から生卵を落とすと、必ず割れるくらい不可避だ。  また、私は心臓と一緒に鼓動を刻むこの爆弾を、解除したいとも思わない。  だって、人はいずれ死ぬのだ。それが早いか遅いかの違いではないか。  仕事は最低賃金。友人はゼロ人。彼女いない歴イコール年齢。何の才能もないし、何も手をつけようとしない、無能で、臆病で、面倒くさがりの生きるゴミ。それが私なのだ。  この先生きていて、いいことがあるだろうか。いや、ない。  本当は今すぐにでも爆発四散して、この世を去るべきなのだ。これを書いている今、この瞬間にも。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加